似非随想録

「幻によろしくな」

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

悪人引越しサービス

終電の時間を裕に過ぎてなお続いた仕事を終えた日のこと。私は私以外誰もいない会社のソファに倒れるように沈み込み、さまざまな鳥たちがいよいよその耳障りな鳴き声とともに爽やかな朝を運んでくる直前の時間まで眠った。それから地下を騒々しく這う鉄の蛇…

カタログオタク

新しいものを買うことが苦手だ。物欲がないということではなく、少し前に話題だったミニマリストとかいう類の人種でもない。なにが苦手かというと、当然のことながらあらゆるものには一長一短というものがあり、つまり想像のとおり機能するようなものはほと…

ごはん問答

近所に行きつけの定食屋がある。長い年月を感じるのれんと店内に染み付いた油のにおい。白髪まじりの店主はいつも機嫌が悪そうな顔をして厨房に立っており、きっと近所の大学にかよう女学生であろう給仕はいつもニコニコ笑っている。オーガニックがどうのミ…